正倉院展
掲載日:2023年10月2日
華麗にして精緻な天平工芸の極み
「第75回 正倉院展」
10月になれば、いよいよ「正倉院展」シーズンの到来。ご注意いただく内容をまとめましたので、お出かけの前にご確認ください。
令和5年(2023)の「正倉院展」について
2023年10月28日(土)から11月13日(月)までの17日間にわたり開催される、第75回目となる正倉院展。調度品、楽器、服飾品、仏具、文書といった正倉院宝物の全容をうかがえるような多彩なラインナップの、初出陳6点を含む59点の品々が出陳されます。今年も観覧券は事前予約制の日時指定券のみで、当日券は販売しませんが、レイト割が販売されます。奈良国立博物館観覧券売場では購入できませんので、ご注意ください。
世界に誇る「正倉院宝物」
シルクロードの終着点ともいわれる奈良。奈良時代にはすでに国際交流が盛んで、異国の文化や文物が遣唐使などによってたくさんもたらされました。その刺激を受けて高級素材を用い、技の限りをつくした異国情緒あふれる工芸品、調度品、仏具、楽器などが国内でも作られました。正倉院にはこれらのほか、戸籍などの文書類、経典、薬物など、膨大な点数の品々が収められ、整理された宝物だけでも9千件を超えています。
この宝物のはじまりとなったのは、天平勝宝8歳(てんぴょうしょうほうはっさい)(756)の聖武天皇の七七忌に、光明皇后が天皇の冥福を祈って大仏に献上した天皇ゆかりの品々です。その後、時を経て、宝庫は3つに仕切られ、北倉にはおもに聖武天皇のご愛用品、中倉には東大寺に献納された品々や文書、南倉には仏具や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)などの東大寺の儀式に関わる品々が納められました。1200年もの昔から大切に継承された宝物群は世界にも類がなく、まさに世界の至宝ともいえるのです。
そもそも正倉院って?
学校できっと一度は習う「正倉院」を、実際にご覧になったことはありますか? 正倉院は東大寺大仏殿の北西、約300mのところにあり、現在は宮内庁の機関である正倉院事務所が管理しています。国宝に指定されている「正倉院正倉」は南北約33m、高さ約14m、総ヒノキの高床式校倉造(あぜくらづくり)の倉庫で、8世紀中頃に建てられました。かつては「校倉造の木材が呼吸して通気性がよかったために宝物が守られた」という説が信じられていましたが、実際には、宝物は辛櫃(からびつ)と呼ばれる櫃に収められたために適度な温湿度調整がなされ、今に伝わったというのが正しいようです。現在宝物は、正倉に近い鉄筋コンクリートの東宝庫・西宝庫で管理されており、正倉には櫃などが納められています。正倉院宝物は通常非公開ですが、毎年10月から11月にかけて総点検が行われ、この時に宝物の一部が奈良国立博物館に貸し出されて、「正倉院展」として公開されます。
正倉院は1つだけじゃなかった?
現在の「正倉院」の本当の名前は「正倉院正倉」といいます。奈良~平安時代、日本各地の役所や大きなお寺には、大事なものを収める「正倉」と呼ばれる倉庫が置かれ、正倉がたくさん建ち並ぶ一画を「正倉院」と呼びました。つまり正倉院は、かつては一般名詞だったのです。しかし時代が下るにしたがって数が減り、最後にたった1棟、東大寺の「正倉院正倉」だけが残りました。そのため今では「正倉院」と言えば、かつて東大寺の正倉院正倉だった建物を指す固有名詞となっています。
★校倉造の「正倉院」も見に行こう!
正倉院は塀の外から見学できます。せっかくお出かけするなら、正倉院展と正倉院、両方を見てコンプリートするのはいかがでしょうか。
(申し込み手続き不要、見学無料)
公開日 |
正倉院展の会期中は毎日 |
---|---|
場所 |
東大寺大仏殿から北へ300m |
開館時間 |
正倉院展の会期中は10:00~16:00 |
今年絶対見ておきたい正倉院宝物セレクション
平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)
螺鈿によって華やかに飾られた大型の銅鏡
南倉70、長径39.9cm、縁厚0.9cm、重さ5410g
南倉 平螺鈿背円鏡 宮内庁正倉院事務所
背面を螺鈿(貝殻片で文様を表す装飾技法)によって華やかに飾った大型の銅鏡。ヤコウガイと琥珀で花文様を表し、地の部分は細かく砕いたトルコ石を散りばめるなど、大変豪華なつくりです。正倉院には螺鈿飾りの鏡が北倉・南倉合わせて9面伝わりますが、本鏡はその中でも大型で、デザイン性も高い優品です。唐(中国)製と推定され、各地の珍しい材を用い、高度な技術を尽くして仕上げられた、歴史上最高峰の鏡の一つです。
九条刺納樹皮色袈裟(くじょうしのうじゅひしょくのけさ)
仏教の信仰が息づく、彩りあざやかな樹皮色の刺納袈裟
北倉1、長さ147cm、幅253cm
北倉 九条刺納樹皮色袈裟 宮内庁正倉院事務所
聖武天皇遺愛の品を東大寺大仏に納めた際の目録『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の筆頭に掲げられた袈裟。その存在は仏教を篤く信奉した聖武天皇を象徴しており、まさに天平期における国家最高の宝物と言えます。「刺納」とは刺し子縫いのことで、黄や緑、縹や赤紫に染められた絹の断片が細かに縫われています。これはぼろ裂を集めて袈裟にする「糞掃衣(ふんぞうえ)」の伝統に則ったもので、あたかも樹木の皮のような風合いを見せるため、特に「樹皮色」と称されました。
碧地金銀絵箱(へきじきんぎんえのはこ)
仏への献物を納めるために使われたと考えられる、華やかに装飾された箱。
中倉151、縦27.9cm、横17.5cm、高さ10.6cm
中倉 碧地金銀絵箱 宮内庁正倉院事務所
床脚(しょうきゃく)を付け、箱内に内張り(嚫)(綿入りのクッション)を付した箱。外面は明るい碧色(青色)の地に金泥と銀泥で花枝をくわえた鳥や蝶を描き、蘇芳色(暗い紫色)の縁に金色の小花文をあしらっています。内張りには花や鳥を織り表した錦を用いています。華やかに装飾された本品は、仏への献物を納めるべく用いられたのであろうと考えられます。底裏に「千手堂」と墨書があり、東大寺千手堂(現存せず)のものであったことがわかります。正倉院に伝わる本品によって、失われた堂宇の荘厳をうかがい知ることができます。
赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾(あかじおしどりからくさもんにしきのだいばんのきゃくたんかざり)
聖武天皇の一周忌斎会で用いられた幡の下端につけた飾り
南倉180、縦39.7cm、横46.3cm
南倉 赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾 宮内庁正倉院事務所
天平勝宝9歳(757)、前年に崩御した聖武天皇の一周忌斎会が営まれました。本作はこの儀式に用いられた灌頂幡(かんじょうばん)という旗から下がる幡脚の下端につけられていた飾りです。この灌頂幡は復元すると全⾧約15メートルという⾧大なもので、本品は幡脚の端につけられた飾りと言っても実に大きいです。正倉院に伝わる脚端飾には様々な錦がふんだんに使われており、この赤地の錦では蓮華唐草(れんげからくさ)に乗る一対のオシドリが華麗に表されています。
<第75回 正倉院展>DATA
会期 |
令和5年(2023)10月28日(土)~11月13日(月)※会期中無休 |
---|---|
会場 |
奈良国立博物館 東新館・西新館 |
開館時間 |
8:00~18:00 |
観覧料金 |
観覧には事前予約制の「日時指定券」の購入が必要 |
前売日時指定券の発売日 |
10月5日(木)10:00~ |
販売場所・時間 |
・ローソンチケット〔Lコード:59995〕ローソンおよびミニストップ各店舗、インターネット〈https://l-tike.com/〉 |
前売日時指定券のご注意 |
キャンパスメンバーズ会員の学生は、奈良国立博物館と連携する特定の大学等に属する学生のみが対象となります。当日会場入り口で学生証の提示が必要です。キャンパスメンバーズ会員校等は、奈良国立博物館ウェブサイトでご確認ください。キャンパスメンバーズの学生が誤って通常料金で「日時指定券」を購入した場合も、払い戻し等はできませんのでご注意ください。 |
問合せ先 |
奈良国立博物館 TEL 050-5542-8600(ハローダイヤル) |
公式サイト |
〈奈良国立博物館〉https://www.narahaku.go.jp/ 〈正倉院展〉https://shosoin-ten.jp/ |
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