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勝手に奈良検定

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第64回 勝手に奈良検定

問題1

巨木の宝庫、奈良県。さて、この写真の木は、いったいどこに生えている木でしょう。名称もお答えください。

第64回 勝手に奈良検定

正解

正解は、一言主(ひとことぬし)神社の乳銀杏(ちちいちょう)。

一言主神社(葛城坐一言主神社)は、全国の一言主大神を祭神とする神社の総本社で、「ひとこと」だけ、願いを聞いてくれる神様として古くから信仰されてきました。鎮座している場所は葛城古道の一角です。古代の地方豪族、葛城氏が支配した地であり、葛城氏の始祖として祀られたのが始まりと考えられています。

その境内に堂々とした姿を見せているのが写真の「乳銀杏」です。樹齢1200年、高さは約25mにもなります。幹からは、乳房のように見える「気根」がたくさん垂れ下がり、そのため、「子どもが授かるように」「よく母乳が出て子どもが健やかに育つように」と、昔から子授けや子育ての庶民信仰の対象となってきました。気根とは、幹や枝から生える根のことで、古いイチョウの木にはしばしば見られ、その姿から「乳(にゅう)」とも呼ばれます。

一言主神社の銀杏の木には、悲しい伝説が残っています。昔、この木を育てた娘が若い修行僧と恋仲になり銀杏の木の下で逢うようになりました。しかし僧侶はある日、姿を消してしまいます。赤ん坊を授かっていた娘は悲しみのあまり子どもを産んですぐに亡くなりました。娘の母親は赤ん坊を育てようとしますが、育てるにも乳がなく、困り果ててイチョウの木の下にやってきます。すると銀杏の木から水が滴り落ち、それを飲んだ赤ん坊はすっかり元気になりすくすくと育ったそうです。以来「乳銀杏」として参詣者が後を絶たなくなったといいます。

問題2

奈良大和路の風景や、仏像写真で知られる写真家の入江泰吉。その彼が、1930年代終わりから40年代前半に掛けて、ある伝統芸能を集中的に撮ったことがありました。さて、その伝統芸能とは何でしょう。

正解

正解は、文楽(ぶんらく)。

文楽とはいわゆる人形浄瑠璃のことで、太夫と三味線弾きと人形遣いとが一体となって演じる人形芝居のことです。謡(うた)いである「浄瑠璃語り」を行う太夫、迫力ある旋律で物語に劇的効果をもたらす三味線、そして表情豊かな大きな人形を三人がかりで扱う人形遣い。江戸時代に誕生した人形劇は、歌舞伎にも影響を与え、庶民の娯楽として親しまれてきました。

奈良大和路の心和む風景を撮り続けた写真家として知られる入江泰吉(1905-1992)ですが、彼の初期の代表作は、意外にも、一連の文楽の写真でした。昭和14年(1939)年から昭和19年(1944)にかけて撮られた「文楽」は、昭和15年「世界移動写真展」で一等賞を、また昭和16年の「日本写真美術展」では文部大臣賞を受賞します。写真家入江泰吉が、不動の地位を確立した作品といってもいいでしょう。

入江が撮影した対象は、人形そのものや、その人形に息を吹き込む人形遣いなど、多岐にわたりました。人形を撮ったものには、浄瑠璃の一場面を演じるもの、頭部だけの「首(かしら)」などがありますが、どれも人形に命が宿ったかのように凄みある作品ばかり。また人形遣いの吉田栄三や吉田文五郎など、昭和の名人たちの鬼気とした迫力も伝わってきます。入江泰吉記念奈良市写真美術館では、ビデオコーナーなどで常時、入江の文楽作品を見ることができます。

問題3

内田康夫の長編推理小説に登場し、物語の重要な鍵を握る「五十鈴(いすず)」でも知られる神社といえば、どこでしょう。

正解

正解は、天河大辨財天社(てんかわだいべんざいてんしゃ)。

天河大辨財天社は、吉野郡天川村に鎮座する神社で、役行者(えんのぎょうじゃ)が蔵王権現を大峯に勧請するに先立って祀られました。高野山を開くにあたって、弘法大師もここで修行したと伝えられています。祭神である市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)は辨財天として祀られ、天川の豊かな水を司る神として、また財を授ける神としても信仰を集めてきました。

この辨財天のもうひとつのご神徳とされるのが、芸能や音楽の技能の上達です。古来天河大辨財天社に伝わる神器「五十鈴」は、まさにこれを象徴するものです。五十鈴は天岩戸にこもってしまった天照大御神を呼び出そうと、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が岩戸の前で舞を舞ったときに使った鈴と同じものと伝えられ、3つの鈴が三角形に結ばれた独特の楽器です。3つの魂が調和したかたちを表したもので、芸事の上達にはこうした精神統一が重要であることを示すともいわれます。

内田康夫の小説『天河伝説殺人事件』は、浅見光彦シリーズの第23弾目で映画化もされました。物語は、ある殺人事件の被害者が持っていた天河大辨財天社の五十鈴に端を発し、やがて能の宗家の跡目争いに発展していきます。ミステリアスな事件と幽玄の雰囲気をいまも残す天河大辨財天社の舞台とがマッチした、推理小説の佳作です。実際に天河大辨財天社には、能が発祥した室町期にもさかのぼる能面や能装束などが伝来し、現在も拝殿の能舞台で能が奉納されています。7月17日(日)の例大祭でも奉納が行われますので、一度訪ねられてはいかがですか?

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