正倉院展
掲載日:2022年10月3日
華麗にして精緻な天平工芸の極み
「第74回 正倉院展」
10月になれば、いよいよ「正倉院展」シーズンの到来。令和4年の正倉院展も昨年に続きコロナ禍の影響により、開催の方法が通年とは異なります。ご注意いただく内容などをまとめましたので、お出かけの前にご確認ください。
令和4年(2022)の「正倉院展」について
2022年10月29日(土)から11月14日(月)までの17日間にわたり開催される、第74回目となる今年の正倉院展。美しい工芸品から、奈良時代の世相が伺える文書まで正倉院宝物の全容をうかがえるような多彩なジャンルの、初出陳8点を含む59点の品々が出陳されます。今年も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、観覧券は前売日時指定券のみで、当日券やオータムレイトチケットは販売しません。奈良国立博物館チケット売り場では購入ができませんので、ご注意ください。
世界に誇る「正倉院宝物」
シルクロードの終着点ともいわれる奈良。奈良時代にはすでに国際交流が盛んで、異国の文化や文物が遣唐使などによってたくさんもたらされました。その刺激を受けて高級素材を用い、技の限りをつくした異国情緒あふれる工芸品、調度品、仏具、楽器などが国内でも作られました。正倉院にはこれらのほか、戸籍などの文書類、経典、薬物など、膨大な点数の品々が収められ、整理された宝物だけでも9千件を超えています。
この宝物のはじまりとなったのは、天平勝宝8歳(てんぴょうしょうほうはっさい)(756)の聖武天皇の七七忌に、光明皇后が天皇の冥福を祈って大仏に献上した天皇ゆかりの品々です。その後、時を経て、宝庫は3つに仕切られ、北倉にはおもに聖武天皇のご愛用品、中倉には東大寺に献納された品々や文書、南倉には仏具や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)などの東大寺の儀式に関わる品々が納められました。1200年もの昔から大切に継承された宝物群は世界にも類がなく、まさに世界の至宝ともいえるのです。
そもそも正倉院って?
学校できっと一度は習う「正倉院」を、実際にご覧になったことはありますか? 正倉院は東大寺大仏殿の北西、約300mのところにあり、現在は宮内庁の機関である正倉院事務所が管理しています。国宝に指定されている「正倉院正倉」は南北約33m、高さ約14m、総ヒノキの高床式校倉造(あぜくらづくり)の倉庫で、8世紀中頃に建てられました。かつては「校倉造の木材が呼吸して通気性がよかったために宝物が守られた」という説が信じられていましたが、実際には、宝物は辛櫃(からびつ)と呼ばれる櫃に収められたために適度な温湿度調整がなされ、今に伝わったというのが正しいようです。現在宝物は、正倉に近い鉄筋コンクリートの東宝庫・西宝庫で管理されており、正倉には櫃などが納められています。正倉院宝物は通常非公開ですが、毎年10月から11月にかけて総点検が行われ、この時に宝物の一部が奈良国立博物館に貸し出されて、「正倉院展」として公開されます。
正倉院は1つだけじゃなかった?
現在の「正倉院」の本当の名前は「正倉院正倉」といいます。奈良~平安時代、日本各地の役所や大きなお寺には、大事なものを収める「正倉」と呼ばれる倉庫が置かれ、正倉がたくさん建ち並ぶ一画を「正倉院」と呼びました。つまり正倉院は、かつては一般名詞だったのです。しかし時代が下るにしたがって数が減り、最後にたった1棟、東大寺の「正倉院正倉」だけが残りました。そのため今では「正倉院」と言えば、かつて東大寺の正倉院正倉だった建物を指す固有名詞となっています。
★校倉造の「正倉院」も見に行こう!
正倉院は塀の外から見学できます。せっかくお出かけするなら、正倉院展と正倉院、両方を見てコンプリートするのはいかがでしょうか。
(申し込み手続き不要、見学無料)
公開日 |
正倉院展の会期中は毎日 |
---|---|
場所 |
東大寺大仏殿から北へ300m |
開館時間 |
正倉院展の会期中は10:00~16:00 |
今年絶対見ておきたい正倉院宝物セレクション!
漆背金銀平脱八角鏡(しっぱいきんぎんへいだつのはっかくきょう)
黒漆地に金銀飾りが美しい華やかな鏡
北倉42、長径28.5cm、縁厚0.6cm、重さ2928.6g
北倉 漆背金銀平脱八角鏡 宮内庁正倉院事務所
八花形に鋳造された銅鏡の背面に黒漆を塗り、金・銀の薄い文様を配し、さらに漆で塗り込めた上で、文様部分の漆膜を剝いで仕上げています。中央には宝相華文を、その周囲には飛鳥や鳳凰、唐草文をあしらった逸品で、流麗に切り出された文様は繊細でありつつ、全体として華やかさを感じさせる優美な鏡です。
鸚鵡﨟纈屛風・象木﨟纈屛風(おうむろうけちのびょうぶ・ぞうきろうけちのびょうぶ)
文様部分にろうけつ染めの技法を用いた屏風
北倉44、(鸚鵡)長さ163cm、幅56.3cm (象木)長さ163cm、幅56.1cm
北倉 鸚鵡﨟纈屛風・象木﨟纈屛風 宮内庁正倉院事務所
『国家珍宝帳』に記載される「臈纈屛風十畳〈各六扇〉」のうちの2扇。鸚鵡屛風(左)は斉衡3年(856)の宝物点検記録『雑財物実録』に記載される「熊鷹鸚鵡麟(くまたかおうむりん)屛風」の1扇、象木屛風(右)は同じく「橡地象羊木(つるばみじぞうひつじき)屛風」の1扇だったと考えられています。いずれも文様部分を蠟で防染を施した後に染料で重ね染めし、熱で蠟を除去して文様を染め抜く「ろうけつ染め」の技法が用いられています。
伎楽面 力士(ぎがくめん りきし)
大仏開眼会で使用された、力士の伎楽面
南倉1、縦35.9cm、横23.5cm、奥行31.8cm
南倉 伎楽面 力士 宮内庁正倉院事務所
伎楽に用いる仮面で、髻(もとどり)を結い、口を閉じて下唇を噛み締める特徴から役柄は力士にあてられています。天福元年(1233)に狛近真(こまのちかざね)が著した『教訓抄(きょうくんしょう)』によれば、力士は呉女(ごじょ)に言い寄り追い掛け回していた崑崙(こんろん)を懲らしめる役どころだそう。左耳上半を除いてキリの一材から彫り出し、表面には彩色を施しています。近年の調査で、ひげには猪毛を植毛していることが判明しました。面裏に墨書があり、天平勝宝4年(752)4月9日の大仏開眼会のために将李魚成(しょうりのうおなり)が制作したとわかっています。
粉地彩絵几 附 白橡綾几褥(ふんじさいえのき つけたり しろつるばみあやのきじょく)
鮮やかな彩色が目をひく、東大寺千手堂伝来の台机
中倉177、縦34cm、横38.5cm、高さ9.2cm
中倉 粉地彩絵几 附 白橡綾几褥 宮内庁正倉院事務所
仏前に献物を供えるための台で、天板と同じ大きさの上敷きが付属します。ヒノキの一枚板で作られた天板に、花葉形に彫出された華足(けそく)をつけており、華足を彩る青系・赤系・緑系・紫系の鮮やかなグラデーション(暈繝彩色/うんげんざいしき)が目を惹きます。天板裏面の墨書と貼紙によって、正倉院に納められる以前は、千手観音菩薩像や銀の盧舎那仏像が安置されていた東大寺千手堂のものであったことがわかっています。
<第74回 正倉院展>DATA
会期 |
令和4年(2022)10月29日(土)~11月14日(月)※会期中無休 |
---|---|
会場 |
奈良国立博物館 東新館・西新館 |
開館時間 |
9:00~18:00 |
観覧料金 |
観覧には前売日時指定券の予約・発券が必要 |
前売日時指定券の発売日 |
9月26日(月)10:00~ |
販売場所・時間 |
ローソンチケット〔Lコード:58885〕ローソン及びミニストップ各店舗、電話受付(TEL:0570-000-028)、または公式サイト<https://l-tike.com/>) |
前売日時指定券のご注意 |
・1回につき、4枚まで購入可能です(無料指定券1回につき1枚まで) |
問合せ先 |
奈良国立博物館 TEL 050-5542-8600(ハローダイヤル) |
公式サイト |
〈奈良国立博物館〉https://www.narahaku.go.jp/ 〈正倉院展〉https://shosoin-ten.jp/ |
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