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奈良と日本酒の醇(あつ)~いカンケイ

掲載日:2024年1月22日

米・米麹・水を原料として日本国内で発酵・濾過したお酒、「日本酒」。日本酒は酒蔵や銘柄ごとに違う味わいを楽しめるのが魅力で、近年は若い世代や女性向けに飲みやすく開発されたものや、海外向けに開発された日本酒も多く出回っています。そんな多世代・多地域にわたり拡がる「日本酒」文化の源は、実は奈良県だといわれています。
今回は日本酒にゆかりの深い奈良のスポットを歴史に沿ってご紹介いたしましょう。

奈良の日本酒にまつわるスポット4選

【目次】

酒造りの神を祀る、日本最古級の神社。「大神(おおみわ)神社」(桜井市)
平城宮で酒造りに使われた特別な井戸。「造酒司井戸(みきのつかさのいど)」(奈良市)
神様に供する酒を千年以上造り続ける。「春日大社・酒殿(さかどの)」(奈良市)
濁り酒から清酒へ、その転換点となった寺。「正暦寺(しょうりゃくじ)」(奈良市)

酒造りの神を祀る、日本最古級の神社。「大神(おおみわ)神社」(桜井市)

日本最古の神社、そして酒の聖地として知られるのが、桜井市にある大神神社です。創建は神代に遡り、拝殿後方にそびえる「三輪山(みわやま。三諸山〔みむろやま・みもろやま〕とも)」をご神体として祀っています。『日本書紀』によれば、第10代崇神天皇の条に“国中で流行った疫病を鎮め、五穀豊穣をもたらした大物主神(オオモノヌシノカミ=大神神社の主祭神)に感謝の意を示そうと、天皇の命により任じられた初めての杜氏(とうじ)がお神酒を造った。その際も神のお力によりとても美味しいお酒ができた”という内容の記述があります。このエピソードから、同神社は酒造りの神を祀る社としても崇められてきました。
また「三諸山」の”みむろ”は「実醪」とも書いたようで、すなわち「醪(もろみ。お酒になる前の状態)」を意味しているのだそう。また、『万葉集』では「三輪」の枕詞として「味酒(うまさけ)」の単語が使われていることからも、「三輪といえばおいしいお酒」を古代の人はイメージしたのではないでしょうか。

大神神社では、毎年11月14日に新酒の醸造の安全を祈る「醸造安全祈願祭(酒まつり)」が開催され、全国の酒造関係者が参列します。祭典に際して、拝殿・祈祷殿に掛けられている直径約1.5m、重さ約200kgの「大杉玉」が、青々としたものに掛け替えられ、冬の風物詩として親しまれています。

杉玉は、新酒ができた合図。
大神神社境内の神聖な杉を使い、1つずつ手作りされて全国の酒蔵や酒屋に送られます

大神神社 DATA

住所 桜井市三輪1422
TEL 0744-42-6633
拝観料 境内自由
駐車場 約590台(無料)
交通
(公共交通関)
JR「三輪駅」下車、徒歩約5分

平城宮で酒造りに使われた特別な井戸。「造酒司井戸(みきのつかさのいど)」(奈良市)

奈良時代に入ると、律令制による宮内省直属の部署として「造酒司(みきのつかさ)」が置かれ、平城宮の儀式や宴会で使用する酒や酢を醸造していました。その造酒司が専用に使った井戸が平城宮跡からいくつも発掘されており、そのうちの一つが、当時の宮内省があったと推定されている辺り、現在の「平城宮跡遺構展示館」の東側に復原された「造酒司井戸」です。

造酒司井戸は井戸遺構に盛土をした上に復原されています。杉の大木をくりぬいた直径140cmもの井筒を中心に据え、川原石を円形に敷き、周囲に石組みの排水溝を巡らせていました。井戸の上に六角形の覆い屋根があったことが調査で分かっており、その規模・構造から、儀式用の酒を醸造するための特別な井戸だったと考えられています。
また遺構の発掘状況から、井戸を含む酒造施設は100㎡を超える規模の区画で、内部に据えられた甕(みか=醸造用の陶製の瓶)は約20から100個へと、時代を追うごとに増えていきました。
濁り酒以外にも清酒(原酒の上澄みか、布で濾したもの)や櫟(れき=イチイの実で作った果実酒)など、15種類以上の特色ある酒を醸造していたことが出土木簡から推測されています。

井戸からは、遠くに若草山をはじめ、春日の山々を遠望できる。
奈良時代の酒造りに想いをはせつつ、平城宮の史跡を巡ってみては

平城宮跡・造酒司井戸 DATA

住所 奈良市法華寺町
TEL 0742-32-5106(文化庁平城宮跡管理事務所)
料金 見学自由
駐車場 約100台(平城宮跡遺構展示館駐車場を利用。無料。8:30~17:00)
交通
(公共交通関)
近鉄「大和西大寺駅」またはJR・近鉄「奈良駅」からバス「平城宮跡・遺構展示館」下車、徒歩3分

神様に供する酒を千年以上造り続ける。「春日大社・酒殿(さかどの)」(奈良市)

神事には酒がつきものです。今では数が減ったものの、かつて全国の主要な社寺では、酒造り(神酒造り)が行われていました。その風習を千年以上の長きにわたり伝えているのが、春日大社の酒殿(さかどの。国指定重要文化財)です。

春日大社御本殿の廻廊西側に佇む酒殿は、平安時代の貞観元年(859年)に創建された現存最古で現役の酒蔵です。
建物内部は非公開で、酒の神として酒弥豆彦神(サカミズオノカミ)・酒弥豆売神(サカミズメノカミ)の2神が祀られており、江戸時代までは旧禰宜の酒殿家によって、毎年3月13日に行う例大祭「春日祭」(拝観不可)に供する神酒造りが造られてきました。
明治以降は地元の奈良豊澤酒造(奈良市)の杜氏によって、2月上旬~3月上旬に酒造りが行われています。酒殿には電気や水が通っていないため、お米の洗い・蒸し・麹造り・酒母造りなどは酒造会社で行うのだそう。
酒殿で仕込まれる日本酒の量は3石(540リットル)。米の粒が残ったドロドロの濁り酒で、酸味がきいており、アルコール度数は高め。酵母が生きているためシュワシュワと発酵し続ける”生きた日本酒”です。神酒として神前に奉納された後は、特定の方だけに下げ渡されます。

酒殿内部には大甕が据えられており、独自の酒母(酒の元になる液体)を使って酒造りが行われます

春日大社 DATA

住所 奈良市春日野町160
TEL 0742-22-7788
拝観時間 【本社参拝】6:30~17:30(11~2月は7:00~17:00)
【御本殿特別参拝】9:00~16:00
【萬葉植物園】9:00~16:30(12~2月は9:00~16:00)
拝観料 境内自由。御本殿特別参拝500円、萬葉植物園は高校生以上500円、小・中学生250円、幼児無料
駐車場 100台(有料)
交通
(公共交通関)
JR・近鉄「奈良駅」からバス「春日大社参道前」下車、徒歩約10分

濁り酒から清酒へ、その転換点となった寺。「正暦寺(しょうりゃくじ)」(奈良市)

奈良時代以降、酒造りは役所(造酒司)を中心に行われていましたが、その技術はやがて民間へ広まり、中世に入ると大寺院で伽藍維持の財源確保のための酒「僧坊酒(そうぼうしゅ)」が造られるようになります。
その寺院の筆頭格が、当時、興福寺大乗院の別院として広大な寺領と数多の修行僧を有していた正暦寺です。

古文書によると、正暦寺の僧坊酒「菩提泉(ぼだいせん)」は、同寺で開発された画期的な技術によるお酒でした。その技術というのが、酵母菌を大量培養するための「酒母(しゅぼ=菩提酛〔ぼだいもと〕ともいう、酒の元となる液体)」を造る「菩提酛造り」、精白米を用いて透明度の高い酒を造る「諸白(もろはく)造り」、同じ味を大量生産できる「三段仕込み」、腐敗防止のための「火入れ(殺菌)」です。
これによって上質で澄んだ清酒の安定生産が可能になり、正暦寺は当時日本最大の酒造地となりました。そして、これらの酒造技術は、”天下第一”と評された奈良酒「南都諸白(なんともろはく)」に受け継がれ、江戸時代初期には「下り酒」として江戸に運ばれました。
その後、「菩提酛造り」は一時途絶えたものの、1999年に約500年ぶりに復活。現在は奈良県内の7つの酒蔵が集まり、毎年1月に「菩提酛」を造る「菩提酛清酒祭」を開催しています(写真)。
また、室町時代に醸造されていた「菩提泉」も復活し、正暦寺で販売されています。

「菩提酛清酒祭」で造られる「菩提酛」で醸造された各酒蔵の銘酒。
完成した日本酒は正暦寺にて購入可能です

正暦寺 DATA

住所 奈良市菩提山町157
TEL 0742-62-9569
拝観時間 9:00~16:00
拝観料 福寿院客殿大人500円、小学生200円
(4月18日~5月8日、11月3日~12月第1日曜日、12月22日は、大人800円、小学生300円)
駐車場 約70台(紅葉シーズンのみ500円)
交通(車) JR「奈良駅」近辺から県道188号経由、約25分(約10km)

最後に

今回は奈良の日本酒ゆかりのスポットを、歴史に沿って、さまざまなアングルからご紹介しました。
現在私たちが目にする、透き通った日本酒の原点が奈良にあったとは驚きですね!

12~3月は日本酒の新酒が出回る時期です。
清酒発祥の地・奈良でお酒めぐりを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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