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特集

和洋折衷の美しさにうっとり。古都奈良の近代建築!

掲載日:2024年2月26日

日本が西洋に追いつこうとしていた明治時代以降、奈良では日本建築の伝統的な要素を取り入れた「和洋折衷」の建物が多く建てられました。
その華やかな西洋建築と、繊細な日本建築が織りなす見事な建築美は、長い年月を経た今も私たちを魅了してやみません。
今回はお寺や観光地など、誰でも立ち寄りやすい近代建築スポットをご紹介しましょう。

後世に伝えたい、和と洋が融合した奈良の近代建築

【目次】

・周囲の仏堂伽藍に溶け込む、コロニアルスタイルの疑洋風客殿。「宝山寺獅子閣」(生駒市)

・天皇ゆかりの明治レトロ建築。「旧高市(たかいち)郡教育博物館(現・今井まちなみ交流センター華甍)」(橿原市)

・興福寺境内から移築、今は郡山城跡に佇む。「旧奈良県立図書館(現・城址会館)」(大和郡山市)

・寺院風の外観と、神社風の内観を持つ和風礼拝堂。「日本聖公会奈良基督教会」(奈良市)

周囲の仏堂伽藍に溶け込む、コロニアルスタイルの疑洋風建築の客殿。「宝山寺獅子閣」(生駒市)

奈良と大阪の県境に横たわる生駒山。その中腹に佇む名刹宝山寺(ほうざんじ)の境内に、明治17年(1884)年に落慶した瀟洒な洋風客殿「獅子閣」があります。
寺院には珍しい、すこし風変わりでモダンなこの建物は、天皇の勅使など高貴な方々を接待するための客殿として宮大工によって建てられました。西洋風の装飾が施されたベランダや色ガラスがはめられたアーチ型の窓が特徴的で、外見は優雅なコロニアルスタイルですが、瓦屋根や漆喰の白壁、ベランダを支える懸崖造り、和室の格天井(ごうてんじょう)など、各所に宮大工の丁寧な仕事が見られます。
1階は洋室1間に6畳2間の和洋折衷仕様で、アーチ状の窓枠と角柱が用いられています。明治期の重厚な木製の螺旋階段を上がった2階は落ち着いた10畳2間の造りで、四角い窓枠に円柱と、表現にも変化が付けられています。日本が近代化する創世記の疑洋風建築(※)として貴重な姿を残しており、昭和36年(1961)には重要文化財に指定されました。
普段は非公開ですが、年数回の特別公開時には内部も拝観可能です。

※疑洋風建築…近代化が急速に進んだ幕末~明治初期に生まれた建築スタイル。主として近世以来の技術を身に付けた大工棟梁によって「見よう見まね」で設計施工された西洋建築を指します。

宝山寺(生駒聖天)DATA

住所

生駒市門前町1-1
TEL 0743-73-2006
拝観時間 境内自由
駐車場 約280台(無料)

宝山寺獅子閣
見学

通常非公開。
内部見学は特別公開時(春・秋の年2回開催)のみ。開催日時については、宝山寺までお問い合わせください。
入館料500円
交通(公共交通機関) 近鉄「生駒駅」から近鉄生駒ケーブル「鳥居前駅」乗り換え、ケーブル「宝山寺駅」下車、徒歩約10分

天皇ゆかりの明治レトロ建築。「旧高市(たかいち)郡教育博物館(現・今井まちなみ交流センター華甍)」(橿原市)

戦国時代に端を発し、江戸期は「大和の金は今井に七分」といわれるほど商業的に繁栄した今井町(国指定重要伝統的建造物群保存地区)。江戸期の面影を残す町のシンボルかつ、観光ビジターセンターとして機能する施設が「今井まちなみ交流センター華甍」です。
前身は旧高市郡教育博物館で、明治36年(1903)に皇太子・嘉仁(よしひと)親王(大正天皇)が御成婚報告のため畝傍御陵を参拝された折の御下賜金で建てられました。
建物外観は和風に仕上げられており、2階建ての本館正面に切妻造の張り出しを設け、唐破風屋根の玄関を付けています。宇治の平等院にヒントを得たという、本館左右に平屋の両翼楼(よくろう)が広がる姿は品格が漂います。室内は漆喰の白壁が美しい和風の空間に、花形や連窓の嵌め殺しの窓装飾など洋風装飾が違和感なく融合し、明治の近代建築独特の味わい深さを醸し出しています。
建物は平成2年(1990)に県指定文化財に登録。2階は貸室のため予約が必要ですが、1階内部は観光案内センターとして開放されています。今井町の歴史資料のほか、町並みのジオラマ展示など今井町をさまざまな角度から紹介しているので、散策前に立ち寄っておくと町歩きをより一層楽しめます。

今井まちなみ交流センター「華甍」DATA

住所 橿原市今井町2丁目3-5
TEL 0744-24-8719
営業時間 9:00~17:00(最終入館16:30)
定休日 なし(年末年始は休館)
駐車場 46台(有料、ただし入庫後30分まで無料)
交通(公共交通機関) 近鉄「八木西口駅」下車、徒歩10分

興福寺境内から移築、今は郡山城跡に佇む。「旧奈良県立図書館(現・城址会館)」(大和郡山市)

再建された追手門や櫓、そして当時の遺構を整備した天守台が美しく、桜の名所としても地域住民に愛される郡山城。その城郭の一角に、まるで寺院のような堂々とした和風建築がそびえています。明治41年(1908)、日露戦争の戦勝記念として建てられた奈良県初の県立図書館です。元は興福寺内にありましたが新館建設のため昭和45年(1970)に郡山城跡へ移築され、現在は城址会館として利用されています。
建物は木造瓦葺二階建てで、入母屋造(いりもやづくり)で千鳥破風(ちどりはふ)付きの主棟の左右翼部に、切妻造(きりづまづくり)の平屋建てを設けたシンメトリーの構成を取っています。玄関正面には貴人を遇するための車寄せも設けられています。内装は洋風のしつらえで、リズミカルに並ぶ跳ね上げ式のガラス窓や擬宝珠が美しい木製階段など、随所に近代和風建築の姿を見ることができます。建築部材は創建当初のものをそのまま用いながらも、市民会館として利用するため間取りはすこし変えられているのだとか。文化的にも歴史的にも貴重な建物として、平成9年(1997)に奈良県の指定文化財になりました。建物内部は1階ホールのみ見学が可能で、土日ならびに祝日に一般解放されています。

城址会館 DATA

住所 大和郡山市城内町
TEL 0743-53-1151(大和郡山市役所/まちづくり戦略課)
開館時間 内部一般開放は土曜・日曜、祝日、10:00~16:00
※平日は外観見学のみ、12月24日~1月6日は休館
料金 見学無料(事前申し込み不要)
駐車場 付近に駐車可能
交通(公共交通機関) 近鉄「郡山駅」下車、徒歩15分

寺院風の外観と、神社風の内観を持つ和風礼拝堂。「日本聖公会奈良基督教会」(奈良市)

近鉄奈良駅から南に延びる東向(ひがしむき)商店街に面した教会で、同教会の信徒であった宮大工の設計により、昭和5年(1930)からおよそ2年かけて建立されました。教会の東隣は興福寺が迫る、まさに古都奈良の中心地。そのため景観には充分配慮し、洋風の外観ではなく、正当なキリスト教会の建築様式に則りながらも随所に宮大工の伝統技を活かした、和洋折衷の木造礼拝堂が建設されました。なお、和風礼拝堂としては国内最大規模を誇り、平成27年(2015)に国の重要文化財に指定されています。
外観は寺院風で、入母屋破風(いりもやはぶ)と千鳥破風を組み合わせた和瓦葺き屋根に十字架をのせ、壁は神社や古民家などによく見られる柱を露出させた真壁造りという和風建築様式を用いています。一転、内観は神社風で、清々しい吉野杉や檜の素木の柱、数寄屋造りでよく見る土壁の聚楽壁(じゅらくへき)を取り入れ、簡素な造形の中にも雅な美しさを醸し出しています。桐材を用いた繊細な透かし欄間や格天井(ごうてんじょう)も見逃せません。
幼稚園が併設されているため、見学は毎週日曜のみです。

日本聖公会奈良基督教会 DATA

住所 奈良市登大路町45
TEL 0742-22-3818
一般公開 見学は原則として日曜のみ
(教会の行事などで見学できないこともあります)
料金 見学無料
駐車場 なし
交通(公共交通機関) 近鉄「奈良駅」下車、徒歩2分

最後に

「ザンギリ頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」と明治の流行歌にある通り、その旋風を受けて、奈良でも初めての近代西洋建築・旧帝国奈良博物館本館が建てられました。しかし、本格的な西洋建築にはさまざまな意見があったようで、これ以降、奈良の近代建築は和の要素を混ぜて、周囲の景観と馴染むような工夫が成されたのだとか。
新しい建物をどうやって奈良の景観に合わせるか、それは匠たちにとって大きなテーマだったのかもしれませんね。
奈良観光の際には、近代建築を訪れて、その美しさだけでなく、背景の歴史に思いを馳せてみるのも面白いですよ。

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